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…未来への扉…
It was decided that it was intended to be passed up by the smile....

アバロン。建国記念日の祭り。
皮肉にもクリームヒルト死去の僅か一月後にその日が迫っていた。
「…お祭り…無理かな…。」
年に一度。そうともなれば、馬鹿騒ぎをしたくなるのが人の常か。
リオルもその印象と異なりそう言った騒ぎ好きの一人であった。
確かに、こういったイベントは、こう言うときには自粛される物なのであるが…。

「……どうだろうね。」
サジタリウスは…どうにもそうならない気がしてならなかった。
その頃…新市街地区の噴水では…。
「お祭り…潰れちゃうんでしょうねぇ…。」
飾り笛を風に掲げ、子供達の輪の中タウラスが寂しげに呟いていた。
皆が楽しみにしていた祭り。皇帝の死去とは言え、潰れて一番がっかりするのは子供達だ。

「陛下いなくなっちゃうし…お祭りやれないし…。」
陛下がもう帰れないから今年のお祭りは出来ない…と言う理屈はまだ通じないらしい。
確かに、嫌なことがあったときほど楽しいことで気分を紛らわせたい。
かつて、恋人の死を知ったとき現れた少年の、成長を見守ることでそうしようとした自分がいる。

「さ、みんな向こうで遊んでおいで。」
そう言って、子供達が散ろうとしているとき、一人の子供が白いローブに突っ込んだ。
「今年…できるかもしれないぞ。」
「……え。」

「よろしいのですか…?」
大臣の一人が、新皇帝に訪ねる。
「ええ…黙祷なんてしても、喜ぶような人に見えました?
 結構…悩んだんですけどね。これが一番良いと思ったんです。
 大丈夫だって、笑顔で見送ってあげることが。」
この言葉は、改めて、祭りの直前に人々に向けて語られ、
後に多くの人々に引用されることになる。「追悼祭」と呼ばれることになるこれがその始まりであった。

「お祭り…あるんだ。」
「うん。確かに、暗くなっていたら祟られそうな気はするけどね。」
町を歩くリオルとサジタリウス。その後ろから…。
「お〜いっ。サージーターリーウースーっ!」
走ってくる赤毛の少年。後に兄に習って奇抜化するそれもまだ普通のショートヘアだ。
「あ…コウメイ。」
「またタンプクに絡まれたの?」

そう。タンプク。クリームヒルトを守れなかったのが相当悔しかったらしく…。
コウメイはよくサジタリウスの元に相談へ向かっていたのだった…。
「追悼祭決まったとたんに今度は『そうだー。俺達がヘコんでどうするーっ!』
 って言い出してさぁ…俺まであの頭にしようとするんだよぉ…たまんないよ。」
「うわ…タンプク荒れてるねぇ…。」
「ん〜…まぁ、あの直後の沈み具合考えると良い方なんだけど。」

そうして、彼等のたどり着いた場所とは…。
「オラオラ!とっととかかって来いや小僧!」
賭試合を行っている裏通りの広場。
「ねぇ…サジタリウス。」
「うん。見つかってしょっちゅうリオルは怒られてる。」
「承知の上かよ…。」
そう…今怒号を浴びせられた小僧と言うのが……リオルだったりする。
「で…良いのかあれ?」
「うん。毎回リオルの全勝で幕閉じてるから。」
もっとも…大抵の場合全試合終わる前に軽装歩兵隊長ロナルドが来て終わるのだが…。

その頃…アバロン一帯を見渡せる尖塔の上では…。
「おー相変わらずやってますねぇ〜…。」
「リオル君今のところ無敗だよ。」
喀血皇帝と青イーリスがそれを眺めていた。
「そう言えばさ、今日誰か来るんだって?」
「ええ。会うのが楽しみです。」

「…今日はロナルド遅いなぁ…もう諦めたのかな?」
既にリオルは数十名の屈強な男達を下して満足げだった。
基本的に強制解散させられてもお金の分配はするらしいが、リオルは受け取らない。
あくまでも遊びとしてここにいる。それがムカツク連中がいる。
リオルがそれを叩きのめす。この繰り返し…だった。この日までは。
今日は…もう誰も挑まなくなり、リオルが、剣を抱きかかえる。
そう…振らないときはいつも剣に布を巻いて、抱きかかえて持っている。
だから剣が重そうに見えるしリオルは子供のように見える。

今日はもう終わり。誰もそれを疑わなかった時…。

「ほう。随分面白そうなことをしているな。」
背後から聞こえた声。印象はクラックスと良く似ている。しかし、微妙にこちらの方が若い。
サジタリウスが振り向いた先にいたのは、
青々とした若草のような髪色をした、マントを羽織った長身の男。ロナルドではない。
それがサジタリウスとコウメイの間に入る。
男の方がリオルより背は高かったが、意外なことにリオルとの差はそれほどでもなかった。

男はリオルの剣に目を向ける。そして…剣を抜いた。
「一戦お願いしようか。」
お願い…ではない。強制。しかし、リオルは嬉しそうに首を縦に振る。
こういった仕草が本来の身長より低いイメージを持たせるのだろう。
男が中央に出て、やっとコウメイと合流する。

「お…おいあれ…。」
「コウメイ。知ってるの?」
身長…で、思いだした。サジタリウス。あれから背の伸び方が芳しくなく、
一歳年下のコウメイよりも低くなっていたりする…。
「ベネディクト…カンバーランドで一番の剣の天才だって言われてたんだよ…。
 ある日突然城出ちゃって帰ってきたり来なかったりだったんだけど…。」
「つまり…世界各国渡り歩いてきたわけだ…。」

……面白い。僕はそう思った。
世界各国を渡り歩いたカンバーランドの天才剣士。
リオルもまた、幼い頃から多くの場所を渡り歩いてここに来ているに至る…。
そして、その剣の素質は誰もが認めるところ。僕は、誰の邪魔が入らないことも祈った。
「どうした?」
「いや…どっちが強いかなって…。」

「お…おい…あのベネディクトが…。」
勝負は…どちらも引かなかった。いや、むしろリオルが押しているのか…。
ベネディクトは息が上がり始めている。リオルは…連戦にも関わらず表情一つ変わらない。
実際は終わるとべったり座り込んだりベッドに沈むこともあるが…
疲労の色が見えない。それが相手にどれだけのプレッシャーを与えることか…。
リオルの無表情が相手の体力を想像以上に削るのは確かだろう。

「どっちも本気になってきたね…。」
ベネディクトが…剣の構えを変える…大技でも出すつもりか…?
「どんなにタフだろうと…コイツはかわせないだろ!」
早い。踏み込みから先の動きは見えなかった。
光速剣。剣の中でも最高レベルに入る技だ。

だから…その後ベネディクトがリオルの上に崩れ落ちた理由も…良く解らなかった。
ベネディクトがリオルの後ろの地面に血反吐を吐いた。
彼を抱え上げた状態のまま、リオルが…穏やかな声で…言った。
「サジタリウス。」
「あ、はいっ。」
……ん?はい?……自然と、こんな返答が出てきた…。
何でだろう…妙に…リオルにそんな権限があるように一瞬見えた…。

で…ベネディクトは…肋骨が結構派手に折れていた。
踏み込みの瞬間リオルが懐に突っ込んだらしい。
お互いのスピードでベネディクトに相当のダメージを与えたことに…ん?
「リオル…手…。」
「……痛い。」
……リオルも手の平に打撲傷…もう直したけどヒビぐらいは入っていたかも…。

「くっそー…まさかこうなるとはなぁ…。」
相当悔しそうだ…無理もない…まさか突っ込んでくるなんて誰も思わない。
「お前強いな。」
リオル…照れてるけど凄い人相手に勝ったんだよ君……。

「あれー?もう終わっちゃったのー?」
そして…まばらになっていく人混みから女性の声がする…正直、驚いた。
衣装の色こそ違っていたし、腰に下げられた大剣が印象深かったけど…。
「……陛…。」
「よ、どうだトモエ。初めてのアバロンは。」
空色の髪は滑らかな浅黄色に。鮮やかな蒼穹の衣装は地味な土色。
トモエと呼ばれた少女。彼女と…同じアマゾネスだけど…別人だった。

「うん。良い町よね。それよりさ、早くお城の方行こ。」
『へ?』
「あ、そうだよな。新皇帝に挨拶しないとな。」
で…何かの縁と言うことで僕等も一緒に歩いていく。

「何か…な。まだ実感が湧かないよ。あの人が亡くなったなんて…。」
「追悼祭…か。最初はちょっと…って思ったけど、お姉ちゃん沈んだ雰囲気嫌いだったもんね。」
「……お姉ちゃん?」
「うん。アタシが小さい頃ヤウダに来たことがあってね。」
「へぇ…。」

一方…リオルは。
「へぇ…メルーの南かぁ…その剣はそこで…。」
ベネディクトと意気投合していた。やっぱり剣に興味が湧いたらしい。

そんなこんなで、僕等はアバロン城へ…。