ころころころころ荷車押して、ころころころころソウジに押させてお引っ越し。
僅かな遺品と生活用具。他には特に積んでいない。
それほど大事な物は、まだ持っていなかったのだから…。ここはアバロン新市街。出来たばかりの町並みは、少し静かに見えていた。
少し静かに見えていた、噴水に浮かぶ青い影。
空を横切る蒼い影。目の前横切る茶色い影を見るまでは。
「…………ほえ?」
噴水にくつろぐネレイドさん。空を横切るイーリスさん。
目の前居たのはモールさん。種族の名前ぐらいは知っていた。
「おや、チェルノさん早いですねぇ。」
で…そのチェルノと言うモールとソウジが親しげに話している。
よく見るとステップの方の民族衣装とか、他にもいろんな人が居た。
そこに…弓を背負った男の人が荷車の上で寝ている。
「………………。」
かなり多い荷物の上でよくまぁ眠れる物と眺めていると…。
「ああ、彼私の分の荷物も運んでくれたんですよ。疲れて居るんで起こさないで上げて下さいね。」
どうも世界各国から来ているらしい。これじゃ知人同士の方が珍しい。
自分もここの初対面同士にはいるのだろうかとか思っていたとき、
噴水の影に無意識のうちに探していた人を見つけた。
「……陛…あ。」
噴水に腰掛けて…ネレイドと話していた。
「あ、ペルーサ来てくれたんだ♪」
やっぱり子供みたい…たしか…28だったかな?とてもそんな風に見えないや…。
「水の方はどう?」
「ええ、それでしたらチェルノさんが月光のクシ作りに燃えてますから
アバロンの皆様にも綺麗な水届けられそうですよ♪」
あ…なんかチェルノが燃えてソウジが引いてる…引きつった笑顔がよく見えた。
「いつか師匠を超えてやるって勢いねぇ…。」
「綺麗な細工と不完全ながらも月光のクシ貰えるから私は良いです♪」
話が途切れたところでヒルトの元まで行こうとしたサジタリウスだったが…。
「陛下、そろそろ戻っていただきましょうか?」
クラックスが先を越していた。ちょっと残念。そして…。
「放せこの三十路男〜っ!!」
「いーえ、放しません。」
またもアバロン名物皇帝引き回し…いつまで経っても子供のままって感じだなぁ…。
二人を見送りながらちょっとソウジの裾を引っ張る。
「…ねぇ…ソウジ?」
「ん?なんですか?」
「あれ…いいの?」
「え?ああ〜…今日は早かったですねぇ〜。」
ほののんと見送るソウジ…あーあ……とか思って見送っていたら…。
「ライトボールっ!!」
「うごっ!」
あ…もろ入ったなありゃ…。
「じゃあね♪」
「ちょっと待ていヒルトぉーっ!!」
あ、クラックスがキレた…。陛下も逃亡に術まで使わなくても良いだろうに…。
「ん〜?面白くなってきましたねぇ…見に行ってみます?」
頷く。確かに見物。で、大通りに出ようとしたら…。
「ソウジ?」
うずくまって…
「う…げほっ…ごほっ…うへ…。」
「…血…。」
「あ…大丈夫大丈…げはぁっ!」
いや…吐血しながら大丈夫言われても…しょうがない…ちょっと手をかざす。
「生命の水…?」
「父さん…医者だったから。」
そしてちょっと気になって大通りに出ると…。
「待たんかいこのガキ皇帝ーっ!!」
「嫌よーっ!まだ一時間も経ってないじゃないのよぉーっ!!」
皇帝と魔術師の熾烈な追い掛けっこをアバロンの民が固唾を呑んで見守っていた…。
「もうあんたには捕まらないからねぇ〜だ♪」
後ろ向いてアカンべー。即位して十年は経っていたはずだが…
こう言うのはなかなか直る物ではないらしい…が。あ、人にぶつかった。伸びた。
「痛ってー…おい!気を付け…あ?陛下…?」
ぶつかった人はどう見ても船乗りと言った感じの人だった。
武装商船団。名前ぐらいは…と言うより父さんの患者って大半がこの人達…
結局包帯がもったいないんで回復術を覚えたわけで…あ、クラックスが追いついた。
「ティ…ティルピッツ殿…き…協力…感謝します…。」
あーあ…すっかりバテちゃってまぁ…。
「痛たた…んあ?あぁ…ティルピッツも来たのね。」
「ああ、俺はちょっと用があって来ただけだぜ。ところでよ…。」
ティルピッツがこっち見た。あ、出発するちょっと前に酒場でケンカしてうちに来た人だ…。
顔が怖いんで直接会話したこと無かったんだっけか。
「あのずっとこっち伺っている奴。親父誰だ?」
は?
「は?」
次の瞬間ティルピッツの両肩スレスレに刀とアンバーメイス、
足下になぎなたが突き刺さったのは言うまでもない…。
…なぎなたと刀は解るけど何故メイスが…(汗
ん?刀?ちょっと振り向く。
「ティルピッツ殿〜滅多なことおっしゃらないで下さいね〜♪」
「ん〜俺的にはお前が最有力だったんだがなぁ〜。」
あ、峰でぶん殴られた。
ソウジ…蒼い顔で口から血を流しながら笑っても怖いだけ…
あ、この場合怖くて良いのか?僕もちょっと腹立ったから蹴り入れて…ん?
「……………。」
ティルピッツの後ろの路地から、人が出てきた。
年は…僕より少し上か…腕に抱えた布でくるまれた大剣が目に付いた…。
月の装飾がしてあって、大きさは2メートルはあるんじゃ無いんだろうか…?
その後で、薄い黄土色の髪と真っ黒い瞳に気が付いた。
その目は何処も見ていないように見えて…少し、異質な感じがした。
「よぉ、リオル。見物はもう終わったのか?」
「………………ん。」
「この子こそどっかの現地妻にでも生ませた子なんじゃないのぉ?」
…あ、陛下も怒ってる怒ってる。で…リオルって子の方は…
「………………………。」
困ってるのか呆れているのか微妙な表情だな…。
「さぁーて、そろそろ戻っていただきましょうか?」
「いぎっ!?」
あ、陛下しっかり捕まってら。
「あらら…クラックスも最近気むずかしさに磨き入ったのな。」
「あう〜…最近ますます。」
あれ…クラックスは…どっかで会ったような…あ、陛下引きずって…行こうとしてまだ抵抗してる陛下。
「お。」
ん?ティルピッツに肩掴まれた。ちょっと怖い。
「お前ミラマーんとこの先生のガキじゃねぇか?」
「……?……あ…。」
「先生は元気か?」
「………。」
やっぱそう来るよね…。
「ちぇすとぉーっ!」
あ、横からフォックスさんが蹴り入れて来た…。
「いきなり蹴り入れる奴があるかーっ!」
さらにマールさんがゲンコツ…。
「何すんのよーっ!」
…一体何しに来たんだこの…あ、タンプクもいた。
「すいませんね〜まだフォックス夕べのお酒が抜けて無くて〜。」
「いやいや、その位元気で良いって。」
あ…フォックスさんの顔ほのかに赤い。で、マールがティルピッツに耳打ちする。
「ん?…そう…か。…残念だったな…。」
きっと…僕の両親のこと…でも…何だかな、僕は…可哀想…か。
そして、マールが去り際に言った。
「では、リオル君また。」
「…はい。」
あれ?…知り合い…そう思って…リオルの方向いたら…目が合った。
「………どうも。」
一礼された。一礼返した。
「そう言えばその子は?」
あ、陛下が口を開いたらクラックスが手を離した。
今なら間違いなく逃げ切れるだろうに…。
「ああ、コイツか?二年ほど前の船旅の時にな、船倉にいたんだよ。
なんか、どっから来たのか聞いても何も言わねぇし…。」
「あれ?密航者は樽流しだったんじゃないの?」
「その…はずなんだけどなぁ…。」
あ〜、こりゃ結局情が移ったって奴だな。
「…ねぇ…リオル。」
なんか僕だけ黙っているのもなんなので声かけてみた。
「…ん?」
「その剣…凄いね。」
「ああ、その剣か。それは俺に会ったときから持ってたんだよ。
何か大事な物らしくてな、滅多に手放そうとしないんだよ。今もな。」
……ティルピッツには聞いてないよ。
「へぇ…。」
とか陛下が感心していたら…。
「ではそろそろ戻っていただきましょう。」
「へ?」
あ、今度こそクラックスに連れて行かれちゃったよ陛下…うーん手際が良い…。
「そう言えば、ティルピッツ殿もここに?」
「いや、俺はもう帰るけど、コイツはな。」
「へぇ…また何で?」
「ああ…コイツが行きたいって言ったんでな…っておい!?」
強面のティルピッツなんて放っておいてアバロン見物にでも行きますか…あ、リオルついてきた。
「…何で…アバロンに?」
「ん…何となく。…君は…。」
「あ、僕はサジタリウス。」
「ん…僕はリオル。よろしく。」
「うん…よろしく。」
僕は父さんの用事だったけから、実際の所もう用がないけど…ここにいたいとは思った。
初めての場所。友人知人の誰も居なかった場所。でも、気に掛けてくれる人はいたし、友達も出来た。
その日、口数こそ少なかれど、仲良さげな二人がアバロンの街を歩いていたそうな…。
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